温かなこと
中が温かい とか、 中が熱い という 言葉を実感したのは
後にも先にも、このときだったと思う。
親指の付け根が どうしても超えられずに、何度もチャレンジになった。
「少し止めておけ」 と 言われて、手はそのままに休んでいると
俺様が力を抜いて、息を深く整える。
括約筋の力を抜くためには、受身になる人が力の抜き方を知らないと出来ないのだ。
圧迫感があった手が少し自由になる。
「いいぞ…」
「ただ突っ込むバカがあるか。 ローションを馴染ませて捻じ込んでみろ」
至らない私に、色々指示が来る。
手がぎゅっと押し付けられて、その力ゆえに、よけい可愛く感じてしまったりして、
私は面白くて仕方なかった。
文字通り朝になって、昼になっても二人でアナルを責め合い
むさぼるようにして求め合った。
夕方近くに帰ることにして、風呂に入り身支度を整える。
部屋に戻った私は、不思議なものを見た気がして、立ちすくむ。
ベットに着替えた俺様が、仰向けに寝ているのだが
何だか惹きつけられる様な、哀しいような 痛切な感じがして
そっと近寄ってみる。
天井を見たまま、何も動かない主が居る。
そっと寄り添ってみるが、動きがない。
顔を覗き込んでみるのだけれど、何だか瞳が濡れたように翳っているだけで
何も言わない。
何だか可哀想な気がしたのだった。
何故、あの時何も言わずにいたのか、
頬をスリヨセテモ、生えかけたひげに手を触れても、何も言わない。
いつもの主は何処へ行ったのか。
何がそうさせているのか、私には何もわからないけれど
コノヒトが望むものすべて、私が出来る限り受け止めたい。
そう、心から感じたのだった。
まさか、自分から離れることになって、俺様の顔を近くで見つめるのが
それが最後とも知らず、私は長いこと 俺様を見つめていた…。
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